日指会の友 【39】

 前回は代替医療ホメオパシー問題を取り上げてみましたが、今回は現代医療でポピュラーに処方されている「血栓防止目的」のワーファリンと言う薬の事件を取り上げます。
ホメオパシーを取り上げたのはサイモン・シン著書がきっかけでしたが、今回のワーファリン事件、何にも関係が無い訳ではないのです。

 このワーファリンと言う薬。血液抗凝固剤と言われるもので、その名の通り人間の血液が持つ「固まる」と言う能力を押さえる薬です。この薬を飲んでいる間は、傷やケガで出血した際に血液が固まらない為、傷口が閉じられないと言う事がおきます。
今回の東京足立の事件では、このワーファリンを処方されていた82歳の男性も口内の出血が止まらずに出血性のショックで亡くなられたと報道にあります。

 先にこのワーファリンと指圧が無関係でないと書きました。それは数年前、長崎の医師からの報告頂き、日指会研修会で取り上げ、鍼灸柔整新聞さんに記事を掲載して頂いた「あるケース」があったからです。
簡単な概要だけ説明しますと、ワーファリンを服用していた年配男性が、臀部(でんぶ)に痛みと酷い内出血を伴って病院にやって来たとの事。医師の問診に患者さんは「腰が痛かったので『指圧』を受けてからアザが出来、それ以来アザが広がり痛みが出て来た」。医師と病院の様々な処置と努力虚しく、その患者さんは手遅れで亡くなられると言う結果を迎えました。

 日指会で、このケースが話し合われた際一番の注目点として取り上げられたのが「臀部にアザが出来る程、押圧をするであろうか?」と「そもそもその男性が受けた治療は『指圧』なのか?」との2点でした。
酷く内出血が出来る程に臀部を押圧する様な手技は、現行の日指会研修会に参加している治療師には想像すら出来ません。当時の研修会で「そんな出鱈目な押圧は解剖学も学んでいない素人でもないとしないだろうし、出来ないのではないか?」との意見も出ました。
もう一つ、現代社会では様々な治療目的、美容目的、慰安目的で指圧、あん摩、マッサージに留まらず、接骨院から整体、カイロ、リフレなどなど、名称にもなんら定義すらないので、指で押したから「指圧」とされたのではないか?と、この点は全く議論にすら発展出来ませんでした。

 様々な意見も出、結論的には男性が亡くなれた今、データに不明な点が多過ぎ明確な輪郭が得られない為、論点を絞ってまとめは出来ないが、現代医療ではこの様な薬もあり、その処方を受けている患者さんもとても多く存在している点は、指圧師・治療師として今まで以上に患者さんに問診する等の注意が必要であろうと、大まかに纏まりました。鍼灸柔整新聞さんにも、臨床に携わる指圧師、治療師一人でも、このようなケースがあった事を周知させるべきだろうと掲載を依頼し、承諾して頂きました。(某業界誌さんには残念な事にデリケートなケースとされ、掲載を断られました)

 今回、ここに毎度の文章力の無い、つたない書かせて頂くのも、ここを多少でも読んで頂いた指圧師、治療師の日々患者さんと触れ合う臨床に携わっている方々と業界健全化の為、指圧師・治療師自立の為、横の繋がりの重要性を考えて頂きたいからです。
 指圧師に最低限周知させておかねばならない事とかがあっても、一切!!厚労省や東洋療法研修試験財団、保健所など管理監督責任ある行政から通達等が無い事実です。一切です。(自分の知る限りただの一度もありません)これは「あん摩 マッサージ 指圧師」と言う国家資格でもあるのに異常な事です。指圧師・治療師の自主性に委ねられていると言う事ですが、指圧師だけの枠ですら纏められていませんね。
 今回は、ワーファリンと言うキーワードが個人的に引き金となり、数年前の指圧業界内ネットワークの脆弱さを再度思い出したので、昨今の業界は営利目的、私利私欲の為ならと、完全にいびつな業界と成り下がってしまっている為、このままじゃ指圧業界いけないなと、危機感を抱いている指圧師・治療師の方々と横の繋がり、自主性、自立性、健全な指圧や整体のネットワーク構築にはどうしたら良いのか考えて頂きたく、そしてその知恵があれば授けて頂きたく、日指会一会員、一理事としまして今回の更新とさせて頂きます。
(書き下ろし的書き殴りではなく、キチンと下書きしてから読み直しして掲載とかしなければとは思っているのですが、本業の傍ら毎度の駄文で申し訳ないです)

誤調剤男性死亡:2薬剤師を書類送検−−警視庁
>送検容疑は、08年8月13日、不整脈の一種「慢性心房細動」による血栓防止のためワーファリン治療を受けていた男性に、処方せんに記載された量の4倍に当たる6ミリグラムを誤って26日分調剤し、翌月9日に出血性ショックによる心肺機能不全で死亡させたとしている。

<薬剤師>誤調剤で男性死亡…容疑の2人を書類送検 警視庁

薬剤師2人を書類送検=4倍の薬を調剤—業過致死容疑・警視庁